自動車保険の事故対応で担当者に求めること、求められること
自動車事故が起こってしまったときによくあるご相談は「保険会社の事故受付担当者の人の言っていることがよくわからない、意図していることがわからない」です。
ご相談をお受けしていて感じる「お客さまが保険会社に求めること」は大きく次の3点です。
・保険に入っているのだから、時間・手間・感情などに振り回される煩わしさを軽減したい
・自分が最終的に保険を使うべきか、使わないべきか(保険の有効な使い方)の判断材料を的確に提供してほしい
・素人にでもわかる説明をしてほしい
最近あったご相談で、保険金支払担当者の電話や対面での説明能力について思ったことについてのお話です。
詳しい事故状況は省略しますが、「車」対「車」の駐車場内での事故で死傷者はなく、お互いが70歳以上でした。
保険会社側からすると、この事故はよくある対物事故に当たると思いますが、素人の契約者側からすると、一生涯で初めてかめったにない経験の事故です。
自動車事故では、「車両保険」「時価額」「対物賠償責任保険」「過失割合」という専門用語が頻繁に出てきますが、保険の契約時(加入時や更新時)に、事故発生後の保険の使い方を理解している人は滅多にいないでしょう。
それはごく当たり前で、実際、事故には様々なケースがあるので、素人が対応するのは困難です。
だからこそ、事故が起こった時は、自分が加入している保険会社の担当者や代理店の支援を受けるために、任意で自動車保険という商品とプロから受けられるサービスに保険料として対価を払っています。
例えば、車を購入するとき、販売担当者からは「こんなことができる機能がついている」と様々な機能の説明は受けますが、エラーが出たり、調子が悪かったたりして困ったときの細かな説明は受けません。
それは、何かが起こった時の原因や対処方法はケースバイケースだからで、カスタマーセンターなどに連絡し、どうすると良いかの相談すればよく、このサービス料も商品の値段に含まれていると考えられます。
車本体のことだと、いつ頃からどんなときに調子が悪くなったのかなど、時間を追って考えてみることができるので、カスタマーセンターの人と話をしていても、部品などの専門用語を使わなければ、話の内容は理解しやすく、何をすべきかの判断もつきやすいものです。
ですが、相手のある自動車保険の事故は違います。突然の出来事で、お互いの感情が入り、保険の使い方もわからないわけですから、お客さまにとって良い使い方を想像できるように、誰にでもわかる言葉での説明が必須です。
警察庁交通局によると、年々、高齢の運転免許保有者が増加していて、75歳以上の人口の約3人に1人が車を運転していることになります。
保険用語に馴染みがない人がほとんどであることと、高齢の人が運転する人数が増えていることを考えると、「車両保険」「時価額」「対物賠償責任保険」「過失割合」などの言葉を使わずお客さまに説明する知識と話し方が備わっていると、お客さまからの安心と信頼が得られます。
自分が今いる環境が普通になり、日常生活では使わない言葉が普通になりやすいですが、世間から見ると、それは特別であることを意識し「初心忘るべからず」ですね。
最後に、私は「お客さまが保険会社に求めること」は大きく3点と前述しました。
今回のご相談でも、わかにくい専門用語を日常生活で使う言葉で通訳するとともに、求めていることに対応してもらうために、簡潔に次の3つを伝えてはいかがですか?と提案しました。
・担当者さんが自分のために色々と話してくれていることはわかった
・自分にとって一番良いと思える事故の解決方法の選択肢の説明
・保険を使う時と使わない時の金銭的な負担の説明
FPが通訳や交通整理を求められることはよくあることですし、相談に来てくださるのはとても嬉しいですが、今回のようなケースは、お客さまはきちんと商品とサービスに保険料という対価を払っているので、できれば保険会社でワンストップで対応できるといいと思います。